eremo phila nivea
(砂漠に咲く花)If you can dream it, you can do it.
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いつだってヘラヘラ笑ってりゃあ、どこだって行ける。
皆、大切なのは自らの役割だけ。
誰かの言葉を聞きながら徘徊者のように心は何処かに消えてしまっている。
何かに納まっていないと安心出来ない世界、それを愚かだと嘆いても何も変わらない。
なら、全てを受け入れて生きるしかなかった。
いつだってそんな風に思っていた。
「ユミル、見積もり依頼のFAXだけど・・・僕の担当エリアじゃ無いよ」
営業のベルトルトが話しかけてきた。
全く、そんなに私が怖いのかね・・・彼はいつも、おどおどしている。
営業成績はいいのだから、もっと自信を持ったらいいのに。
私は何も言わずにちらりと背の高い彼を眺めた。
机に座っているせいか、とてつもなく大きく見える。
「ユ、ユミル?」
困った顔がより解りやすくなった。
私は笑う。 意地悪ばかりはいけないなと思った。
「りょーかい。午前中までには終わらせるわ」
そのFAXを片手で受け取り、文章に目を移す。
嗚呼、これなら10分で終わらせられる内容だな。
それよりも・・・私は事務所を目で一周した。
今なら少し休憩しても怒られなさそうだな。
私は胸ポケットに入っている煙草を確かめながら、そそくさと事務所を出ていく。
ニコチンが足りない。
それなのに誰かが私を呼びとめた。
「おい、ユミル。また、休憩か?」
からかうような声、振り返るとライナーがニヤニヤしている。
その横でベルトルトが「よせばいいのに」といった表情をしている。
「あー・・・ニコチンが足りないんでね。何か用事でも?」
正直、苛々はしている。
ライナーは私の態度に苦笑し「いや、特に何も無いな。ただ・・・今日、久しぶりに三人で飲まないか?」と誘う。
「え?嗚呼・・・また、可愛い子でも見つけたのか?」
ライナーが急に飲みに誘うのは可愛い子に会った時くらいである。
「まぁな。で・・・今回は本屋の子でな?接客が丁寧で・・・」
照れながら言う彼の声は大きく、アニとミカサが一瞬、こっちを見たのが見えた。
まぁ、煩いよな・・・マジ。
私はため息を吐く。
「なぁ、ライナー。今日、付き合ってやるから煙草吸わせてくれ・・・」
ライナーは私の言葉に固まった。
「嗚呼・・・悪かったな」
「いや、この話は夜、存分に聞いてやるよ」
私は煙草を口に咥え、事務所を出て行った。
この分だと連続して三本は吸える気がした。
「でなっ?俺はあの子を本屋で見つけた時、運命だと思ったんだ!」
「う、うん・・・」
顔を真っ赤にし熱弁しているライナーにベルトルトは押され気味だった。
本来、彼はお酒が弱いはずなのに通常時と変わらないのはライナーの言葉を真面目に聞いているからだ。
頼んだビールは半分も減っていない。
私は煙草を吸いながら、ライナーの話をぼんやりと聞いている。
ちなみに今日は彼らをアパートまで送る為、ウーロン茶をちびちび飲んでいる。
テーブルの上には枝豆とたこわさが微妙に残っているが何か注文したいなと思った。
「おい・・・ユミル、お前はどう思う?」
「あ?」
「あってなんだ、あって・・・お前は俺の話を聞いて今回はどうだと思うんだって言ってるんだ」
力が入っているライナーを見て、話は聞いていないのだけど今回も駄目だなと思った。
「・・・・・押しが強いと前みたいに失敗すんぞ。女性ってのはだな、時間を掛けて忍耐強く、自分に尽くしてくれる男が好きなんだよ。お前みたいに好きだってすぐ言っちまう奴は駄目だな。なぁ?ベルトルト」
「えっ・・・わっ、わかんないけど・・・そうじゃないかな」
少し顔を赤くしたのは酒のせいじゃない気がした。
「そ、そうか・・・・」
「それと、付き合ってもないのに何かしらの理由をつけてプレゼントするのも駄目だな」
「うっ・・・・」
ライナーは下を向いてしまった。
どうやら、ボールペンと付箋を次回、渡そうと思っていたらしい。
気色悪い。
「てか、ライナーはともかく、ベルトルトはモテそうだよな?」
そう意地悪く笑ってやると彼は恥ずかしそうに曖昧に笑うのだった。
我ながら誰に対しても意地悪だなと思った。
「あー・・・ねみぃな」
真っ暗な道を車で一人、走る。
カーナビの隅には23時13分と書いてあった。
「全く・・明日も仕事なのにライナーの奴。お?雨降ってきやがった・・・」
フロントガラスにポツポツと雨が跳ね返る。
規則的な音が何故か心地よい。
「・・・ビール飲みてぇな」
ふと、ベルトルトが飲んでいたビールを思い出した。
やっぱり、飲まないなんて無理だな。
「コンビニでも寄るか」
私はいつもと違う道を走る。 いつもの道はコンビニが存在しないからだ。
雨が気が付けば強くなってきた。
大粒の雨がガラスを強く叩く。 ワイパーを素早くしなければ到底、見えないくらいだった。
何となく、車から出るのが億劫になってくる。 スーツも濡れたくなかった。
「やっぱ・・・そのまま、帰るか」
Uターンしようとした瞬間、私の目に何かが映った。
その人はこの雨の中、傘も差さずに歩いていた。
その姿に目を奪われる。
解らない、解らないけど・・・このまま無視なんて出来なかった。
瞬時に車を止めた私はどしゃ降りの中へ飛び出す。
「おい!」
細くて脆そうな腕を掴む。
「え・・・・?」
振り返った少女は怯えていた。その青い目は私を明らかに警戒していた。
きっと、いつもの私だったら、関わらなかった。
それでも、こんな状態であれば薄情な私でも声くらい掛けるのだろうか。
「あっ・・・あの・・・?」
彼女の声にハッとする。 自分が何をしているのか解らない。
でも、その少女は泣いているように見えた。
「わりぃ・・・夜遅くに、しかもこんな雨の中、歩いてるの見たら・・・居ても立っても居られなくなっちまった。家は?近いのなら、送ってくけど・・・」
彼女は私の問いに黙ってしまう。
そして、答えづらそうに私の目を見るだけだった。
これ以上、話し込んでいると彼女だけじゃなく私も風邪を引いてしまいそうだった。
だから、私は良い奴でも何でもないのに彼女に「話くらい聞いてやっから。とりあえず、うちに来いよ」と言ってしまった。
名前も知らない人間を家にあげるなんて、本当に馬鹿だと思う。
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Fin
続きます、一応^^
アニとミカサが全く出てなくてすいません!
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