eremo phila nivea
(砂漠に咲く花)If you can dream it, you can do it.
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夜の風は冷たくて寂しくて、でも、それはどこか愛おしい。
私は屋根の上に立ち、昼間に選んだ獲物を探す。
空気が冷たくて心地が良い。
だけども、外の空気は決して澄んでいるとは言えず、密集した人間の匂いや排気ガスの香りが無駄に鼻のいい私には不愉快だった。
本当に人間は自らの便利さの為に自らを苦しめている事に気が付いていないのだと思う。
いや、むしろ、何がいいかさえも解らなくなっているのかもしれない。
そうでなければこんな酷い香りを身にまとって生きているなんて、私には考えられない事だった。
白い小さなコウモリが私の耳元へやってくる。
「見つかったかい?」
キィキィと金属音を奏で彼は血の在りかを囁いた。
「そう・・・そっちなんだね」
目を赤くし、私は舌なめずりをする。ようやく、食事の時間だ。
屋根と屋根の間を飛び乗り、私は大きな一軒家にたどり着く。
ふと、風が髪をさらう。
「今日は風が強いんだね・・・・」
独り言を言う私の肩にすとんと彼が乗る。
この行為は「案内はここで終わり」という合図だった。
「あとは・・・家に入れてもらうだけ。ねぇ?出てきてよ・・・寒いの」
ガラス窓に向かって私はそう言う。
きっとすぐに暗い目をした貴女が私を迎えに来てくれるの。
嗚呼、貴女に混じって微かに血の匂いがする。
窓を隔てて誰かの気配を感じる。
待ち遠しかった。
「あと、もう少し・・・もう少しで入れる・・」
お腹が不意に鳴る、一週間前の狩りが失敗してから初めての食事だった。
「ミーナ、お前にも分けてやるからな・・・」
私は肩に乗る相棒を優しく撫でる。そうしているうちにがらりと勢いよく、窓が開くのだった。
私は靴を脱ぎ、ふわりと屋根から滑り落ちた。
「殺伐とした部屋・・・・余計なものは置かない主義ってやつだね?」
私は完全に自分の意識が無い彼女に話しかける。
思った以上に大きかった。
私はため息を吐く。ミーナが心配そうに私の周りを飛んでいる。
「・・・・意外と大きい子を選んでしまったみたいだね。まぁ、お腹が減っているから特に問題は無いんけど・・・」
黒髪の少女は明らかに私より大きくて私は彼女を見上げてしまっている。
首には赤いマフラーをし、その姿はまだパジャマというものではなかった。
「これでは・・・血が吸えない。そうだ、座ってくれないかい?」
私は彼女に命令する、すると彼女は近くにあったベッドの上に腰掛けた。
これで私の背丈より彼女の首筋が下になった。
私はマフラーを少しずらし、彼女の首筋にそっと近づく。
そして、彼女の皮膚に噛みつき、温かい血を求めた。
一瞬、びくりと体が震えたのを感じながらも私は力を緩めることはなかった。
皮膚を裂き、溢れだす赤い血が私の喉を潤していく。
温かい、いや、むしろ、熱いくらいだ。
気が付けば口の端も彼女の首先も私の咥内から流れ出た涎で濡れていた。
私は口を離し、乱暴に手の甲で拭う。
顔が熱い、こんなに夢中になるのは久しぶりだった。
黒髪の少女は人形のようにそのまま、座り込んでいる。
見ればマフラーも少し湿っている感じがした。
私はお腹を触り、彼を呼ぶ。
「ミーナ、おいで・・・・ミーナ?」
くるくると彼は私と彼女の周りを回っている。
首を傾げると彼は甲高い音を二度出した、警戒音だった。
「・・・・痛いんだけど」
声が聞こえ、振り向く前に私は手を引かれてしまう。
私はそのまま吸い込まれるように倒れこんだ。
ベッドが大きく揺れ、ぎしぎしと振動する。
正直、何が起こったのか解らなかった。
目を開けると私はしっかりと抱きしめられている。
パニックになるのと同時に耳と頬と全身が熱くなるのを感じた。
「とても・・・・可愛い」
耳に届くくらいの距離で私はそう彼女に言われる。
「なっ、離して・・・・・」
目が合う。
「あっ・・・」
その目は熱っぽく、私はすぐに目を逸らしてしまう。
彼女はただの人間。私は違うのに、何故か抵抗出来なかった。
「どうして・・・・」
いつもは殺してしまうのに、今は赤子のように彼女に抱かれたままだった。
「最初に襲ったのは貴女、私は・・・血を吸われた。次は私が貴女の血を吸う番・・・」
「あっ・・・やっ。ま、待って・・・・」
首筋に唇を這わせ、そのまま熱い舌がゆっくり下へと降りていく。
「んっ・・・あっ、んんっ!」
触れられる度に体が反り返り、震えてしまう。
脳内が痺れ始めていた。
私の両手は彼女の背中に無意識に爪を立てている。
体は熱く、湿っていく。
「まっ・・・待ってよ・・・・」
乞うように彼女を見ても止めることはなく、首筋を吸い続ける。
両腕の力だけがただ、強くなっていく。
私は何の抵抗もせずに彼女の体をきつく抱きしめ、震えているだけ。
「もっと、よくしてあげる・・・」彼女が笑い、体を離す。
そう感じた瞬間、自らの体が反転する。
「あ・・・・・」
ベッドに痛いくらい押し付けられている。
「昨日、貴女を見た時から・・・私の心は奪われてしまった」
真剣な顔で彼女は私を眺めている。
また、私は目を逸らしてしまう。
こんなにも真っ直ぐな目を見たのはあの時で最後だと思っていた。
恐かった、大切だったから。
「何故・・・・泣いているの?」
彼女が私の頬に触れる。私は目を見開いた。
嗚呼、なんだ。
私はまだ・・・・アナタを・・・
急速に冷たくなっていくココロ。
もう、どうだっていい気がした。
だけども・・・・
「ミーナ」
私は愛しい名前を呼ぶ。
まだ、駄目なんだ。
何年経ったって・・・・何度、どうしてを繰り返しても、私は・・・まだ。
溢れだす涙を目の前の少女はただ、眺めている。
見ないでと顔を隠す私に彼女は近づき、不敵に笑う。
「敗北?私は・・・・その言葉の意味を存じ上げません」と。
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Fin
ラストの言葉を急に言わせたくなった。
英語で言うと「Defeat? I do not recognize the meaning of the word.」らしい。
(マーガレット・サッチャーの名言)
てか、ミカアニなのが疑問ですが楽しんでいただければ幸いです^^
ちなみにこれは続かない予定です(笑)
リクが多ければ書きますが・・・・(笑)
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